キタゴヨウ林はブナ帯のやせ尾根上などの限られた狭い立地に成立している。この尾根上のキタゴヨウ林の成立立地条件を明らかにし、キタゴヨウ林がどのような機構で維持されているのかを検討し、報告書をまとめた。 1、ブナ帯山地でキタゴヨウが優占する尾根の形状と土壌断面 山形県の今熊山において、尖度が高い尾根上ではキタゴヨウが優占し、逆に尖度の低い尾根上ではブナまたはミズナラが優占した。これらの優占度は斜度よりも尖度によって影響されていることが分かった。さらに土壌断面の構造が種構成を決定していることが明らかになり、尖度はその土壌断面の構造に大きな影響を及ぼしていると推察された。 2、東北ブナ帯山地の尾根上に成立する森林の構造とそれを決定する立地特性 日本海側だけでなく、内陸・太平洋側のブナ帯山地の尾根上の森林を対象に調査を行った。 神室山と飯豊山では上記の今熊山と同様に尾根の尖度と優占度との間に明確な関係があり、土壌断面の構造が種構成を決定していた。それに対し、内陸・太平洋側のブナ帯山地では、複数の針葉樹が混交し、日本海側の尾根上で認められたような特定の関係は認められなかった。 などで調査した。 3、豪雪地帯の尾根上の異なる微地形におけるキタゴヨウの成長と死亡 東北日本海側の豪雪地帯に属する飯豊山において、尾根上を中央部、東斜面、西斜面の3つの微地形に区分して、そこに生育するキタゴヨウの1984年から1996年の12年間の成長と死亡を調べた。 キタゴヨウの相対成長率は各微地形間で差は認められなかったが、進階木、残階木、枯死本の出現頻度は微地形間で有意に異なった。このような微地形間で異なる進階率、枯死率、残階率や特異な立木形態の出現頻度には冬季季節風やそれに伴う積雪による影響が推察された。
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