前年度までの研究によって、栃木県内49市町村における一人当りの林野面積の時間変化が人口密度のべき乗に反比例して減少することが明らかになり、その減少の仕方によってこれらの市町村は合計10のグループに分類された。更にこれらのグループに属する市町村について産業別就労者数の割合や主要交通網からの距離で測定された立地条件を調べた結果、いくつかの例外があるもののグループ間ではこれらの条件が異なる一方、同じグループ内ではこれらの条件がほぼ同じであることが明らかになった。 本年度は傾斜角度という地形条件から上記各グループ間の特徴を調べた結果、平均傾斜角度と各グループのべき係数の平均値の間には、ほぼ直線関係が認められた。 さらにランドサットTMデータを用いて栃木県全域にわたる森林位置図を作成する一方、国土地理院の数値地図50メータメッシュを用いて栃木県の傾斜分布図を作成し、森林の分布と傾斜角の関係を調べた。栃木県は県西部に位置する日光連山と県東部に位置する八溝山地に夾まれで南北に平野が広がっており、一般的に森林は傾斜の急な山岳地にまとまって分布しているが、県北の那須町と黒磯市の北部である那須町との境界付近及び今市市には比較的傾斜の緩い土地にも森林が分布していることが明かとなった。 本年までの研究から栃木県内の市町村について、産業別就労者割合、主要道路からの距離で測られた立地条件、土地の傾斜角度で測られた地形条件が判明すれば、人口密度の増加に伴う一人当りの林野面積の減少を、人口密度のべき乗式である程度予測できることが明らかになった。今後さらに地形条件、地理条件、産業構造などの経済条件をより適切な指数として表現する方法を究明する必要がある。
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