A.全般的研究成果:本研究は、直接的には世界各地で起こっている森林破壊、特に酸性雨(霧)による樹木の活力度低下や立ち枯れ等につながる情報を樹木葉の分光スペクトルから得る事であった。しかし調査を進めて行くうちに、世界的に喧伝されている「酸性雨により樹木の立ち枯れと森林荒廃」は覆されつつある事が分かった。しかし、「酸性雨が森林を破壊する」と言う見解や報告が100報あれば、それを否定する報告は1にも満たない。しかもこの従来の説は、人間活動が環境破壊を起こすと言うストーリー性も十分あり、大方に受け入れられている。まさに、原因は2つに割れている。しかし、今後、この原因解明はさらに大きな問題となろう。また、より確実な結論を得るにはさらなる地道な研究が必要である。 B.分光特性の測定と植物活力度評価:0.25-14.0μmの波長域を測定する分光計の立ち上げは、主に可視・近赤外波長域のMSR-7000について終了し、測定を開始している。本研究では酸性雨の代わりにPHを3-4に調整した稀硫酸等を用いて植物葉に噴霧し、経過の分光計測した結果は、以外に酸に強く、森林破壊は酸性雨ではないと言う説を補強している。また、植生状態を評価する植生指数(VI)を検討の結果、これもかなり曖昧で不備である事から、現在はVIの数学的な検討と再定義の研究も開始している。その他、関連の画像処理アルゴリズムの開発を行った。 以上、この分野は光学的分光計測と植物生理、また数学的モデルや解析が交差する複雑な、しかしリモートセンシングの応用では避けて通れない重要な分野であるが、いまだに議論百出の状態であり、徒にリモートセンシング画像のみで不用意に結論を急ぐのではなく、今しばらくは本研究の様な地道な研究が必要であると考える。
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