<近縁種間関係の現地調査> 昨年度は長野県天竜川流域において、オサムシ科昆虫の異なる2属で、近縁種どうしが谷の両側から侵入し、側所的分布を維持しながらも交雑をおこしている実態が明らかにできた。本年度もこのような近縁種の相互作用のみられそうな地域をいくつか調査したところ、同様な関係が、西隣の木曽谷上流のアオオサムシとミカワオサムシ間でも認められることがわかった。このように大きく地理的に隔離されている種どうしが接する狭い地域では、性的競争によって個体群が維持されていると同時に、交雑により一部の遺伝子が水平移動するという現象が各地で生じていることが明らかになりつつある。 また、分類群を広げての予備的な調査を各地で行なった。 <近縁種間関係に関わる飼育実験> 野外で交雑帯を形成する2種(マヤサンオサムシとイワワキオサムシ)、中間的な個体群をはさみ、河川を境に側所的に分布する2種(アオオサムシとミカワオサムシ)の交配実験を継続して行なった他、基本的に側所分布をするものの、境界付近では混棲し、雑種がほとんど生じない2種(アオオサムシとシズオカオサムシ)についても新たに交配実験を開始した。その結果、前2つの組み合わせでは雑種が継続して生じたが、組み合わせによっては雄が不妊の個体になるなど適応度の低下が認められた他、最後の組み合わせでは、交尾行動は頻繁におこすもの、雑種形成にはなかなか至らないことが明らかになった。
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