1992年に岐阜大学農学部附属演習林に設定した二次林調査区(面積1ha)内の50m×50mの方形区において、胸高直径5cm以上の立木の樹種、樹高、胸高直径を記録するとともに、成長錐によって樹齢の調査もおこなった。樹齢の頻度分布より、全立木の75%が樹齢40〜60年生であり、またモードが55〜60年生にあったことから、現在当林分の上層で優占する立木の大部分が、約55年前に伐採された跡地にほぼ一斉に侵入・定着した立木であることが明らかになった。樹高、胸高直径の頻度分布から、林分内の立木間にはサイズにばらつきが認められた。樹齢とサイズの関係を検討した結果、サイズのばらつきは定着時期の違いによってある程度まで説明できた。しかし、50〜60年生の伐採前後の短い期間に侵入・定着した立木の間にも大きなサイズのばらつきが見られたことから、個々の立木の生長過程が影響していることが示唆された。成長速度を樹種間で比較したところ、サイズの頻度分布において高い位置にモードをもっていた樹種(ウダイカンバ、ミズキ、アカシデ)は、低い位置にモードのあった樹種(リョウブ、クマシデ、コハウチワカエデ)より高い成長速度を示していた。ただし、同一樹種内でも50〜60年生の立木間にサイズの差が生じていたことから個々の立木の生育環境が成長速度を左右した可能性が考えられた。伐採跡に定着した立木(後生樹)の成長速度は、伐採前の林分の上層木であったと推定される胸高直径40cm以上の大径木からの距離、あるいは後生樹の周囲の前生樹密度と反比例の関係にあった。したがって、伐採前から存在した大径木、前生樹は伐採後跡地に侵入した後生樹の成長に負の影響を及ぼしたといえる。以上の結果から、二次林の再生過程は立木間のサイズのばらつきが増大する過程であり、その過程においては定着時期、種特異的な成長速度、そして個々の立木の生育環境が重要な役割を果たすことが解明された。
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