1986年に北海道大学農学部付属苫小牧演習林内に設定した調査区(面積1ha)、および1992年に岐阜大学農学部付属位山演習林内に設定した調査区(面積0.25ha)の再測定を、それぞれ1996年と1997年に実施した。測定項目は前回測定木の成育状態、胸高直径、新規加入個体の樹種、胸高直径、根元位置とした。風害跡林分では、1986〜1996年の10年間で組成的に大きな変化は認められなかったが、樹高2m以上での胸高断面積合計は27.5m^2/haから29.99m^2/haへと増加し、立木密度は4527本/haから3464本/haへと大幅に減少した。枯死木本数が1439本/haであったのに対して、新規加入本数は376本/haであった。したがって、風害跡林分における構造的変化は枯死木の発生、および生存木の成長によってもたらされていることが明らかになった。方形区を10m×10mの小方形区100個に細分化して解析した結果、枯死木の発生は密度依存的で、しかも小径木ほど死亡率が高いサイズ依存的過程であることが明らかになった。生存木の成長にもサイズ依存性が認められ、サイズの小さな生存木ほど成長率が低かった。また、生存木の成長率は、その生存木より樹高の高い立木の密度による負の影響が認められ、林分の階層構造が一方向的競争を介して下層木の成長を左右していることが示唆された。 伐採跡林分では、1992年から1997年の5年間で胸高直径5cm以上の立木の胸高断面積合計が33.82m2/haから33.72m2/haへと少しだけ減少し、立木密度も1404本/haから1260本/haへと減少した。しかし、組成的な変化はなかった。伐採跡林分では新規加入が全くなかったことから、風害跡林分と同様に、枯死木の発生と生存木の成長が構造的変化の推進力となっていると考えられた。調査区を10m×10mの小方形区に分割して解析した結果、枯死木本数の密度依存性、成長率の林分構造依存性が認められた。 以上の結果から、風害跡地林分では約30年、伐採跡地林分では約50年が経過した時点で、初期侵入個体間での相互作用のもたらす自己間引きにより林分構造が変化する段階であることが明らかになった。
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