森林土壌中の水分移動プロセスには、降下浸透、林床面蒸発、樹木根系による吸収がある。本研究は、森林土壌を対象に降雨時に発生する降下浸透とその後に起こる蒸発過程がともに不飽和水分移動方程式にしたがうことを実験的に明らかにするとともに、両プロセスに不飽和浸透流解析を適用し定量的な追跡を試みたものである。 上記の目的にしたがい、ここでは非攪乱で採取した森林土壌カラムを用い、一定強度の人工降雨を与え土壌水分の増加量とその後の蒸発・乾燥過程で起こる水分量の減少を室内実験により把握した。解析では、不飽和浸透流解析を適用し上下端の境界値に実測したサクション値を与え、再現したカラム内のサクション分布から動水勾配を求め、カラムに対する入力である降雨量とカラムから排出される降下浸透量、蒸発量を評価し実測値と対比し検討した。 これにより次のことが明らかになった。1)給水過程では、解析により得られたサクション分布は、実測値に比べ10〜30分ほど遅れる傾向を示すこと。2)蒸発過程では、解析された水分量は実測に対していずれの降雨強度でも約2〜7mmほど過小評価していること。これの原因として、1)はカラム内の浸透現象がダルシー則が成立するマトリックス浸透によらずパイプ流的浸透による影響を受けていること、2)はカラム上端から10cm区間のサクションの測定ができず、蒸発フラックスの大きい給水終了後1〜2日間の蒸発量が評価できなかったことであると判断している。 次の段階では、実測できなかった上端表面から10cm深までの表層の土壌水分の変動を実測するため測定方法を改良するとともに、実際の森林地を対象とした測定を行い、本手法を適用し検討する予定である。
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