2本の固定立木樹冠の間を、1本の移動木樹冠が接触し、かつ通過するときに生ずる力学的現象を、主要な影響因子と関連づけて解析・検討した。またその結果に基づいて、接触・通過時に発生する最大抵抗力と通過に要する仕事を求めるための基本式を導いた。 立木梢端部を用いたモデル実験および理論的考察から、接触・通過現象は樹冠を構成する枝の形状、材質、伸長方向、小枝や葉の状態、そして立木密度など多くの物理的因子に関係することがわかった。これらの因子はさまざまな仕方で影響するが、抵抗力や通過仕事に関しては基本的にはすべて樹冠を構成する枝のたわみを通じて影響が及ぶことが判明した。そこで枝のたわみの抵抗力基礎として最大抵抗力F_mを求める式を導いた。 F_m=η(1+μ)f_<bm> ここでηは枝と枝が接触するときの接触効率、μは接触摩擦係数、そしてf_<bm>は接触区間における枝のたわみ抵抗力の合計の最大値である。 通過仕事W_tも以下のように同じ形式の式で表せる。ただしW_<bt>は樹冠接触に関わる全ての枝のたわみ仕事の合計である。 W_t=η(1+μ)W_<bt> 計算に必要な項目のうちf_<bm>とW_<bt>については、枝の密度、形状、材質などから比較的容易に定めることができる。今後の課題は実験棟により、接触効率ηと接触摩擦係数μを適切に推定することである。
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