林道開設に伴う地形改変は道路周辺の回廊に限定されるにもかかわらず、経路伸長と共にその影響域は面的に拡散し、最終的には陸水域の接点である河畔域に「負荷」として集結する。一方、林道からの土砂流出は、供用後も周辺域に対し恒常的に「負荷」を与え続ける。そこで本研究では、林道から河畔域への土砂流出の時系列的な動態から景域的な負荷域を推定すること試みた。具体的には、滋賀県北西部の高島町に開設された広域基幹林道「鵜川・村井線」をモデル路線として、新旧航空写真・デジタルオルソの画像解析により、林道周辺域及び河畔域相互の流出土砂の時間的・空間的変化量の予測と緩衝域としての景域バッファーの領域決定について検討した。 その結果;(1)流出土砂の拡散規模は林道開設直後が最も大きく、その後漸次減少し遅くとも10年程度で一応安定した状態になる。(2)林道開設直後の流出土砂の拡散規模は、谷側の20mゾーン内に集中し、全体の6割〜7割程度を占める。(3)最大拡散域として、少なくとも100m前後まで達することが確認された。(4)「環境負荷」の軽減という観点からは、植生・樹林帯によるバッファーの設定は有効であると考えられるが、この場合、拡散規模に応じたゾーン幅と配置方式を決定する必要がある。(1)〜(3)の結果から、当該地域においては最大流出長に相当する。100m程度のバッファーを目安とすることが考えられるが、累積面積率曲線の増加傾向から、30mや60m毎にゾーン幅や配置を検討する必要があることが示唆された。(5)河畔域での土砂流入による環境負荷を軽減するためには、景域バッファーとして20m〜30mの領域を考慮する必要があると結論づけられた。
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