研究概要 |
1.温帯森林流域における水質と生態学的物質循環量のモニタリング(補足的観測) 滋賀県南部に位置する森林流域(0.68ha)と,基岩地質は同じだが森林の発達段階の異なる森林流域,裸地の流域において,各水文素過程に対応した水文観測設備とそれぞれの部位での採水・水質計測の体制を整え、継続調査を行った。これに加え、CO_2ガス分析計(現有)を用いて溶存CO_2濃度、土壌空気中のCO_2濃度の詳細な測定を行い、流域内での空間的分布とその時間変動を調べた。観測項目と測定方法は以下の通りである。 1)雨量、土壌水分量、地下水位、流量、対応する雨水、土壌水、地下水、湧水、渓流水の試料採取を月2回行った。水質測定項目は、pH、電気伝導度、温度、溶有CO_2分圧(原位置測定)主要カチオン・アニオン,SiO_2濃度(実験室)であった(継続中)。 2)流域内の特徴的な水文過程を示す土層を数カ所選んでプロットを設定し、土壌CO_2ガスケツト濃度、地温、土壌水分量のプロファイルを測定した。 3)リタートラップを用いて植物-土壌系の養分循環量を測定した(継続中)。 2.水文・水質観測データの整理との抽出、データベースの構築 流域観測から得られたデータと、すでに収集されているの各水文過程での主要カチオン、アニオンの濃度変動の観測結果を元に、各水文過程ごとにpH等、アルカリ度等重要な水質インデックスの制御要因を整理し、モデル化に際し考慮すべき平衡反応を抽出した。検討すした事柄は、1)pH値の決定における溶存態のCO_2(生物学的要因)や風化過程で生成される塩基(地球化学的要因)の影響、2)土壌層への有機物供給、有機物分解にともなう無機態窒素と土壌CO_2の濃度形成、3)土壌CO_2環境と地下水の溶存CO_2の分圧の変動の影響である。種々の観測結果と同森林流域で採られた物質循環に関するデータをデータベース化を進めている。この過程で,桐生試験流域における酸の緩衝メカニズムに関し,浸透過程にそった空間分布があることを明らかにした。また、降雨イベントにおける流出NO_3^--Nの濃度成態の詳細なメカニズムが明らかになった。さらに,裸地-若齢森林流域-森林流域に関し,1995年9月〜1996年8月までの,無機態溶存物質の収支を把握した。これによって森林植生の発達過程における,物質循環の経年変化の水質形成に及ぼす影響が考察された。
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