研究概要 |
わが国の森林資源政策は,森林法にもとづく森林計画制度によって体系づけられ,所有形態の如何を問わず人工造林による資源整備を中心に推進されている.中でも私有林では造林補助金によって林家の造林意欲を高めるという形で,つまり林家の経営マインドに依拠してきた. しかし,近年の台風災害やシカ等の鳥獣害,あるいは木材価格の長期的低落傾向のもとで林家の経営マインドは著しく後退し,間伐等の森林施業がなおざりにされるばかりでなく,人工林の皆伐跡地すら再造林せず,放置される例が聞かれるようになった。特に九州地方ではスギ人工林の成熟に伴って皆伐が増加しているが,その跡地が再造林されず放置されるということは森林資源の保続という意味で重要な問題を含んでいる. そこで,本年度は九州地方の典型として大分佐伯南部流域を選び,人工林皆伐跡地の再造林の実態を調査した.また,大きな被害をもたらしているシカの食害についても調査した。その結果,スギ素材生産量の30%余りが人工林の皆伐によること,この皆伐跡地の40%強が再造林せずに放置されていること,跡地に公団・公社造林を期待する林家が多いこと,そして当地ではシカの食害被害が甚大で防護ネットの設置が不可欠であること等が明らかになった.
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