研究概要 |
わが国の森林資源政策は,森林法にもとづく森林計画制度によって体系づけられ,所有形態の如何を問わず人工造林による資源整備を中心に推進されている.中でも私有林では造林補助金によって林家の造林意欲を高めるという形で,つまり林家の経営マインドに依拠してきた. しかし,近年の台風災害やシカ等の鳥獣害,あるいは木材価格の長期的低落傾向のもとで林家の経営マインドは著しく後退し,間伐等の森林施業がなおざりにされるばかりでなく,人工林の皆伐跡地すら再造林せず,放置される例が各地で見られるようになった. そこで,昨年度の九州地方における調査に引き続き,今年度は四国地方を対象地に選び,流域林業の優良事例にあげられ,活発な林業・林産活動の行われている高知県嶺北地域において実態調査を行った.同流域では,豊富な人工林資源が,優秀な素材生産業者や森林組合あるいは第三セクター等による活発な素材生産活動に支えられて,経済資源として活発に活用されている.さらに,製材工場やプレカット工場の整備,産直住宅企業の形成,などが森林組合や林業・林産業界,木造住宅建築業界などの一体的な協調によって進展し,流域林業としてのシステムが効率的に機能している. しかし,林家の中には人工林の立木を林地ぐるみ販売するという者も少なくない.それは再造林の負担を逃れるためであり,九州で広範に観察される再造林放棄と本質的に変わるところはない.
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