この研究の目的は、都市域の保全系緑地の分布状況と緑地に期待される機能の関連から、緑地の質と緑地の機能との対応関係を検討し、最終的には距離スケールと対応させながら、住居の分布と緑地相互の位置関係を考慮した緑地の適正配置についての理論を提案することにあった。このための基礎研究として、山口県宇部市を対象に実地調査と解析を行った。 このなかで、緑地が複数の機能を複合的に発揮していることを踏まえながら各種の緑地の機能を効率よく発揮できる緑地配置を検討し、居住人口の配分と地域特性を勘案した全体としての適正配置を提示する手法を提案した。さらに、現況の緑地分布の評価手法の検討に際して、条件の変化や緑地整備の進捗、あるいは目標水準の変更などに、随時対応できるシステムを開発し、実施計画の策定過程において効果評価のシミュレーションと計画へのフィードバックが可能な手法について検討した。 具体的な事例研究の場として、福岡県宗像市および山口県下関市を対象に緑地の分布と緑地の機能別の評価についてとりまとめ、その結果を「緑の基本計画」策定の形で提案した。宗像市においては、現況で緑地が不足している場所を抜き出す手法を工夫をして緑の欠損区域を図示し、住民にとっての緑の充足度という観点から緑地整備の計画に活かす手法を提案した。 下関市の計画においては、緑地の配置計画に市民を参加させる手法について検討した。ワークショップを開催し、行政資料からまとめられた現況の特性と課題に、ワークショップで得られた市民の提言を反映させながら基本方針と目標を設定する過程で、植物社会学の分野で群落区分を行うときに用いる組成表操作の技法を応用した。
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