火山噴火は火山周辺域の水文環境を急激に変化させる。すなわち、火山噴出物は森林を破壊し、また細粒の火砕物は土壌浸透能を極端に低下させ表面流の増大を招き、侵食の激化さらには斜面崩壊・土石流を誘発する。一方、噴火後は植生の回復に伴い浸透能を回復し、侵食・土石流が減少していく。このような火山噴火前後の水文環境および水文現象の変化を把握しておくことは火山地域の防災計画や火山噴火後の復興計画にとって重要である。本研究は、雲仙、桜島等の火山を主な対象として、観測データを総合的に解析し、火山噴火に伴う火山周辺の水文環境や水文現象の変化の把握、さらには噴火後の長期的な変化の把握およびその予測を目的としている。得られた結果を整理すると次の通りである。 1 雲仙普賢岳周辺の山腹斜面において火山灰の堆積厚と浸透能の測定を行った。その結果、火砕流が頻繁に発生した1993年には火山灰堆積厚の急激な増加に比例して浸透能も急激に低下している。その後火砕流の回数が減少するにつれて浸透能に回復がみられた。 2 雲仙普賢岳の山腹斜面において表面流の観測を行った。その結果、火砕流堆積物被覆斜面の表面流は降下火山灰被覆林地のそれに比較して流出量、ピーク流量ともに大きいこと、表面流発生の限界降雨強度は火砕流堆積物被覆斜面で1.0mm/10min程度、降下火山灰被覆林地斜面で1.5mm/10min程度であることが明らかになった。 3 雲仙および桜島においてビデオカメラや超音波式水位計によって土石流の観測を行った。雲仙普賢岳で発生している土石流は1993年をピークにしてその後経年的に規模、発生回数ともに減少している。火山活動が継続している桜島では、土石流の規模や発生回数に減少はみられず、火山活動の盛衰に影響され変動している。
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