研究概要 |
研究代表者と研究分担者は密接な連携を保ちながら研究計画に基づき研究を遂行し、次のような概要の結果を得た。1.沖縄県内に産するヒルギ科のオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ミソハギ科のミズガンピ、アオイ科のオオハマボウの5樹種を研究材料に用いた。2.組織培養に用いた主な器官はオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギでは散布体(胎生種子)であり、胎生種子を形成しないミズガンピとオオハマボウでは種子を無菌的に発芽させた無菌苗であった。3.すべての供試樹種でカルスが誘導され、そのカルスは継代培養可能であった。4.ヒルギ科3樹種では継代培養後のカルスの増殖が遅く、器官分化培地上で細胞が緑色を呈し細胞内に葉緑素を生産させることは可能となったが、器官を分化させるまでには至らなかった。5.器官分化に至らなかったヒルギ科3樹種では植物ホルモン濃度を変えて、器官分化の検討が繰り返されている。6.ミズガンピでは日長時間が16時間(3,000lux)でオーキシンとしての2.4-Dが0.04mg/l以下、サイトカイニンとしてのベンジルアミノプリンが0.1mg/l以下の添加量で根及び葉が分化した。7.オオハマボウでは日長時間が14時間(4,000lux)で2.4-Dが0.20mg/l以下、サイトカイニンとしてのカイネチンが0.1mg/l以下の添加量で根と葉が分化した。7.根と葉の分化がみられたミズガンピとオオハマボウの一部では、その後試験管内でほぼ完全な幼植物にまで発達するものもみられた。8.試験管内で発達したミズガンピとオオハマボウの幼植物は試験管内から取り出され、ガラス室内での馴化培養に移された。9.器官分化とそれからの幼植物の馴化までの報告がなかったマングローブ植物の中で、本研究ではミズガンピとオオハマボウで幼植物までの発達と、ガラス室内での幼植物の馴化というこれまでに報告されたことのない新たな知見が得られた。
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