研究概要 |
本年度の研究は,基本的に従来の研究によって得られてきた結論や推論を補強するデータの収集,および流路変動等の過去における氾濫原の発達過程と侵食微地形関係についての分析が中心となった.これまでの研究によって,氾濫原や扇状地の浅い地層には起源や歴史の異なる複数の種類の地下水が存在し,ある種の地下水は降雨・河川水位の上昇に素早く反応して水位を上昇し,またこのような地下水は氾濫原堆積物よりは粗粒で孔隙の豊富な堆積構造の中を流動していることが明らかになった. 本年の研究においては,これまで調査されてこなかったトレンチ(侵食微地形)において、従来と同様の手法によるデータの収集(ピエゾメータ作設,地下水位の降雨との応答関係調査,トレーサによる地下水経路の調査等)を行った.地下水位の応答関係の調査ではこれまでの調査と同様に降雨との応答関係がみられた.エピゾメータによって応答の敏感さに大きな差があり,特定の水みちの存在の状況証拠がさらに補強された.トレーサによる調査では特定の水みちを裏付ける結果は得られず,トレーサの投入地点や検出位置の再検討が必要である.また,空中写真判読から過去の流路の分布と変遷を把握した.この結果からは上記のトレンチやその付近が河道であった証拠は得られず,トレンチが旧流路であったとしてもかなり古い時期のものであると推測された.またこの調査と合わせて氾濫原面における詳細な地形測量の結果,かつて洪水流が氾濫原面のトレンチの部分を流れた可能性があることが明らかになった.これとトレンチの形成を関連付けて考察したが,トレンチ形成の主因は従来の推測と同様地下水によるパイピングであると結論された. 今後は特に氾濫原全体における流路変動と地下水による侵食の影響についての分析に主眼を置く予定である.
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