研究概要 |
調査地には埋積流路を地下水が流動したことによって形成されたと予想される特異な侵食微地形(トレンチ)が2ヶ所存在する.一昨年度までは一ヶ所を中心に地下水動態の観測(ピエゾネータ作説,地下水位の降雨との応答関係調査,トレーサによる地下水経路の調査等)を行なっていたが,昨年度からはもう一つのトレンチでの観測をはじめ,今年度はその観測に重点を移した.この調査からは基本的に従来の調査結果を越える特段の新しい結果はでず,従来からの結論を補強することになった. 1997年8月の降雨により,古くから観測を行なっていたトレンチにおいてパイピングによると思われる小規模な上砂移動が生じた.従来の研究からこのトレンチの形成は埋積流路の存在とパイピングによると予測していたが,この現象はこれを裏付けるものであると考えられ,この土砂移動現象の記載およびトレンチ周辺の詳細な測量を行なった.従来からの地下水動態観測結果および経時的に撮影された空中写真の判読と合わせて上記予測に関する妥当性を検討した. これらの研究結果を総合的に考察し,氾濫原・扇状地などにおける沖積過程(fluvial processes)と地下水が関係していること,および近年生態学において注目されているhyporheic zone(河床間隙帯)に沖積過程が関係し,沖積地の構造や地下水動態が多様な環境をもたらす要素となっていることなどを考察した.
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