スギは我が国における代表的な造林木であるが、建築用材等以外の用用途に利用されておらず、しかも安価な外国産材の使用が高まっていることから、現在の材蓄積量は余剰状態になっている。以上の背景に基づき、本研究ではスギ有効利用の一環として抽出成分の利用に着目し、高血圧症の治療と予防に応用が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性について検討した。 本学上阿多古演習林産のスギ(樹齢15年)を外皮、内皮、心材、辺材、葉、根に分別し、それぞれをヘキサン、クロロホルム、エタノール、熱水で逐次抽出した24画分についてACE阻害活性を検索した結果、外皮エタノール抽出画分が最も高いACE阻害活性を示した。同画分を逆相HPLCで分析すると11のフラクションに分離され、その内5つのフラクションに活性が認められたことから、本年度はそれぞれのフラクションを分取し、ほぼ純品にまで精製されたフラクション中の活性物質を^1H-NMRおよびGC-MS分析で同定した。 ^1H-NMR分析から、活性物質がCatechinまたはRobinetidolである可能性が示され、Catechin標品とのHPLCによるスパイクテストおよびGC-MSスペクトルの比較を行った結果、標品とリテンションタイムおよびマススペクトルが完全に一致したことから、スギ外皮エタノール抽出画分中のACE阻害活性物質の一つはCatechinであることが判明した。なお、重量割合で、同成分はスギ外皮エタノール抽出画分の約14%を占めていた。
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