スギは我が国における代表的な造林木であるが、建築用材等以外の用途に利用されておらず、しかも安価な外国産材の使用が高まっていることから、現在の材蓄積量は余剰状態になっている。以上の背景に基づき、本研究ではスギ有効利用の一環として抽出成分の利用に着目し、活性酸素の関与する種々の疾患(発ガン、老化等)の予防に応用が期待されるスーパーオキサイドディスミュターゼ(SOD)様活性および高血圧症の治療と予防に応用が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性について検討した。 本学上阿多古演習林に生育するスギ(樹齢15年、樹高13m)を外皮、内皮、心材、辺材、葉、根に分別し、それぞれをヘキサン、クロロホルム、エタノール、熱水で逐次抽出した24画分について各種生理活性を検索した結果、SOD様活性については心材エタノール抽出画分が、ACE阻害活性については外皮エタノール抽出画分が最も高い活性を示した。そこで、それぞれの画分に含有される活性物質を逆相HPLCを用いて単離・精製し、^1H-NMR及びGC-MS分析に供して活性物質の同定を行った。 その結果、スギ抽出物のSOD様活性物質はセキリン-Cであり、ACE阻害活性物質はカテキンとプロシンアニジンB3であることを明らかにした。
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