研究概要 |
1.2種の青変菌、Aureobasidium pullulans,Ceratocystis piceae、の液体振とう培養から得た色素の化学的特徴を、元素組成、UVスペクトル、IRスペクトル、プロトンNMRの測定により検討した。その結果、両菌の生産する色素はともにメラニンであるが、A.pullulansのそれはすでに報告されているものより縮合度が高いことを明らかにした。 2.市販の合成チロシンメラニンは芳香族構造を多く持つが、菌生産メラニンは脂肪族構造に富み、タンパク質と多糖類に結合していることが示された。 3.エゾマツの辺材、心材、辺・心境界材試験体を、寒天培地上の両菌の菌叢に接触させておくといずれの試験体にも変色が発生し、栄養豊富な条件では心材にも菌糸の侵入と変色が起こることが示された。 4.エゾマツの辺材、心材に水・温水抽出またはアルコール・ベンゼン抽出処理を行い、両菌に暴露すると、アルコール・ベンゼン抽出材では変色がなお発生するが、水・温水抽出材では変色が抑制された。この変色抑制は、A.pullulans〜辺材の組み合わせでとくに顕著であった。 5.両菌は無処理のエゾマツ辺材と心材に4〜5%の重量減少を起こす程度の木材腐朽力あるが、水・温水抽出を行っても無処理材と同等の腐朽力を示すのに対し、アルコール・ベンゼン抽出した辺材では腐朽が2.5%程度に低下した。 6.上記4、5の結果から、青変菌にとってアルコール・ベンゼン抽出成分は栄養供給、水・温水抽出成分はメラニン生産促進の役割を果たしていることが示唆された。
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