研究概要 |
木材の辺材部を変色させ、経済的価値を著しく低下させる変色菌のうち、とくに頻繁に見られる2種の青変菌、Aureobasidium pullulans,Ceratocystis piceae、について、着色物質の分離とその化学的特徴と着色に関与する木材成分の推定等を行った。結果の概要は以下の通りである。 得られた色素の化学的特徴を、元素組成、UVスペクトル、IRスペクトル、プロトンNMRの測定により検討した。その結果、両菌の生産する色素はともにメラニンであるが、A.pullulansのそれはすでに報告されているものより縮合度が高いことを明らかにした。 市販の合成チロシンメラニンは芳香族構造を多く持つが、菌生産メラニンは脂肪族構造に富み、タンパク質と多糖類に結合していることが示された。 エゾマツの辺材、心材に水・温水抽出またはアルコール・ベンゼン抽出処理を行い、両菌に暴露すると、アルコール・ベンゼン抽出材では変色がなお発生するが、水・温水抽出材では変色が抑制された。この変色抑制は、A.pullulans〜辺材の組み合わせでとくに顕著であった。 両菌は無処理のエゾマツ辺材と心材に4〜5%の重量減少を起こす程度の木材腐朽力があるが、水・温水抽出を行っても無処理材と同等の腐朽力を示すのに対し、アルコール・ベンゼン抽出した辺材では腐朽が2.5%程度に低下した。 上記4、5の結果から、青変菌にとってアルコール・ベンゼン抽出成分は栄養供給、水・温水抽出成分はメラニン生産促進の役割を果たしていることが示唆された。
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