住宅の湿度環境は、快適な生活や、建物の耐久性を確保するうえで、温度環境と並び重要である。以前に行った3階建研究棟・最上階室についての研究によると、この室が際立った自然調湿機能を持つことがわかっている。本年度は、その原因を、内装材の調湿能の寄与、および、建物の構造の寄与の両面から検討した。そのさい、調湿能の簡便な判定法を考案した。調湿能の簡便測定法とは、一面が開いたスチール箱の開放面を下向にして、アングルで支えた被測定材の上にのせ、窓を開放した室内に放置し、箱中央の温湿度を測定し調湿能を検討する方法である。得られた相対湿度の対数-温度直線の勾配(B値)を調湿能の判定基準とした。この方法にとって従来のB値測定法による場合のようなプログラマブル温度調節室を必要とせず、また箱内部に箱と同じ寸法の材料を内装するなどの煩雑さを避けることができた。簡便法を用いて得た合板についてのB値はB≒0であり、従来法による値に等しかった。透湿による影響は木材の厚さが9mm以上では認められなかった。また、透湿性の高い材料については、裏面にビニール膜を貼ればB値への影響を防げることがわかった。さらに、この方法で、季節の変わり目など温湿度が日ごとに大きく変化する場合でも、かなり正確なB値が得られるようである。一方、上記木造棟室の中で調湿能の期待できる部分である木質フローリングについて、この方法でB値を測定するとB=-171x10^4であり、この室の内装材の調湿能は低いことがわかった。この室の高い調湿能は小屋組からの水分の吹き出しによることがわかった。
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