内装材料の調湿能の判定基準としてB値が知られており、その値を用いて室の調湿能を評価し得る。本年度はより実際的で簡便なB値の測定法を考案し、その妥当性を検討するとともに、実際の大規模木造建物への応用を試みた。正弦的温湿度変動下で測定した場合、今回用いた材料の多くについて、簡便法で得たB値は、従来法の結果と同様であった。しかし、透湿性の大きい材料についてのB値は、簡便法と従来法では異なった。それらについて、所定の時間における透湿量が同じであれば、材料やその厚さが異なっても同様のB値が得られ、簡便法で得られるB値は透湿を考慮した場合の調湿能指標に拡張可能なものであることが分かった。その際、合板では、接着層が防湿層として作用することが示された。同じ材料について温湿度自然変動下で測定をすると箱内の温湿度は不規則に変動するが、1日周期毎のB値を求めると、簡便法の結果は従来法と同様であった。これらのことから、簡便法はB値測定法として妥当であると結論された。この簡便法を、京大宇治構内に建設されている大規模木造棟・小屋組部分に応用した結果、野地板の吸放湿特性は室温ではなく、外気温に依存し、それが小屋組部分の調湿過剰をもたらし、さらに、その直下の室の湿度環境をも支配していることが分かった。このように、簡便法を用いると、建物の調湿に関して従来法では得られなかった情報が容易に得られることが明らかになった。
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