・アイナメの繁殖生態について、スキューバダイビングと設置型水中ビデオによる行動観察により調査した。その結果、 1.アイナメの雄がなわばりとする場所は、大きく2つに分けられることがわかった。ひとつは海底の起伏の凸の上部の海藻が密に生えず見通しがよく利く場所であった。もうひとつは反対に凹の谷間で周囲の海藻に埋もれている。前者は卵塊数が比較的多く、雌に好まれやすい場所と思われるが、ビデオ観察ではスキーニングが頻繁に観察された。 2.アイナメ卵のふ化率を低下させる要因は、産卵めすによる捕食とスキーニングによる卵塊の基質からの剥離が大きいと推定された。これらの要因は、なわばりの場所と関係していると予想され、平成9年度の調査はこの点を明らかにする。 3.なわばり雄はしばしば保護中の卵を捕食することが観察された。親魚の胃中から見出される卵と親魚の血縁について、現在DNA分析による解析を試みている最中である。 ・シワイカナゴの胚期における生き残りに影響する要因について調査した。その結果、 1.大型魚類による卵の捕食が主たる要因であることが推定された。また、捕食は産卵基質であるホンダワラ類に活力があるときには生じないことも明らかになった。本種は大型魚類の重要な餌生物となっていることから、藻場の重要性が改めて確認できた。 ・ビデオによる行動解析に基づく資源管理方策の策定モデルとして、ケガニ用人工礁開発のためのモデル実験の結果をとりまとめた。 1.ケガニは砂に潜る習性があるが、身を隠すことができる適当な基質があれば、その場所に長期とどまることがわかった。このことから、立体的な人工礁を作ることでケガニの棲み場の増加が可能であることが示唆された。
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