研究概要 |
1.アイナメの繁殖生態について,スキューバダイビングと設置型水中ビデオによる行動観察により調査した。その結果、 (1)アイナメ雄のなわばりは、自然地形の岩礁帯のほか、テトラポットなど人工構造物帯にも多く見られた。これらは、海底の起伏の凸の上部の海藻が密に生えず見通しがよく利く場所であったり、凹の谷間で周囲の海藻に埋もれている場所であった。両者の比較では、前者は卵塊数が多く雌に好まれやすい場所と言えそうだが、ビデオ観察ではスニ-キングが頻繁に観察された。 (2)アイナメ雄はスジアイナメ、クジメなど同属の雌を求愛し産卵させる場合がしばしば観察された。こうした交雑はテトラポット帯に多くみられた。アイナメと他の2種の産卵場所は、自然地形帯では不連続であるため、人工構造物がそうした不連続帯を狭めた可能性が考えられた。種の攪乱、水産上の商品価値の低下など、自然と人間社会との関わりで新たな問題が提起された。 2.シワイカナゴの胚期における生き残りの要因、および生残稚魚の産卵日組成について調査した。 (1)大型魚類による卵の捕食が主たる要因であることが推定された。また、捕食は産卵気質であるホンダワラ類に活力があるときには生じないことから、大型魚類の重要な餌生物となっている本種の生態を通じ、藻場の重要性を改めて確認できた。 (2)産卵期を3期に分けて日令分析した結果、産卵期のあとに生まれた個体ほど生残率が高かった、しかし、成長は悪いことから、翌春の繁殖期においては、わずかに生き残った早く生まれた個体ほど再生産に貢献できる可能性が考えられた。 3.ビデオによる行動解析に基づく資源管理方策の策定モデルとして、ケガニ用人工礁開発のためのモデル実験結果をとりまとめた。 (1)ケガニは砂に潜る習性があるが、身を隠すことができる適当な基質があれば、その場所に長くとどまることがわかった。このことから、広い砂底の中でもわずかな面積に立体的な人工礁を作ることでケガニのすみ場の増加が可能となることが示唆された。しかし、設置については環境改変を含むものであるため、十分なアセスメントは不可欠であろう。
|