I「ワムシの培養における原生動物相の遷移」:モデル培養槽では、培養初期には主に鞭毛虫が出現し、それ以後の、対数増殖期と定常期には繊毛虫が優占したが、培養後期には鞭毛虫も再び出現した。繊毛虫の種類はEuplotes(長径約75μm)とUronema(長径約20μm)であり、両者は同じ生態学的地位を占めているものと考えられた。 II「食物連鎖網における原生動物の機能」:両繊毛虫のうち、より大きいE.vannusを代表種として分離・培養した。つぎに、ワムシ培養槽に存在する有機物を、活きた餌料藻類、死亡した餌料藻類、さらに細菌の付着増殖した死亡藻類、ワムシ糞に分けて定義し、人工的に調整したこれらをワムシおよびE.vannusに与えた場合の利用効率を、摂餌率および増殖率の定量、安定同位体^<15>Nによるトレーサー実験などにより評価した。その結果から、ワムシ培養槽中でE.vannusが増殖する機構はつぎの様に解析された。E.vannusは活きた藻類を利用できないが、ワムシ増殖の誘導期には、残餌となって死亡し、細菌の付着によって餌料価値の高まった藻類が好餌料となる。対数増殖期には残餌は発生しないが、E.vannusの増殖に最も好適なワムシ糞の発生は多い。しかし、これの摂餌はワムシの糞食性と競合する。定常期には槽内の有機物蓄積が多くなり、ワムシの生理活性が低下する一方で細菌の増殖は多く、E.vannusの増殖に最適な環境となる。 III「増殖阻害性原生動物のワムシに対する致死作用」:日本栽培漁業協会玉野事業場でのワムシ大量培養の不調時に分離した太陽虫は、ワムシ培養水を培地とし藻類Chlamydomonasを与えるか、または酵母投与に起因する細菌の増殖が盛んな場合に10^6cells/ml程度にまで増殖した。この太陽虫が共存する場合、ワムシは遊泳力を失い沈降、死亡した。また24時間後のLC_<50>は10^4cells/mlであった。
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