平成8年度調査計画に沿って、福島及び奈良中央卸売市場(水産物)の卸売会社、仲卸業者、市場管理事務所さらに量販店等を対象に調査を実施した。得られた知見は以下のとおりである。 第一に、福島市場に代表されるが卸売経営の悪化が著しく、利益が創出されていないばかりか企業倒産という重大な危機に見舞われ、公的機関としての卸売市場経営が想像以上に深く進行中であることが明らかになった。卸売会社の経営危機はバブル期における兼業業務の失敗という要因も見落とせないが、問題の本質は中央卸売市場で定められている市場・流通圏が事実上形骸化し、県境をこえて卸売会社ないし仲卸業者の競争が熾烈になっていることが大きい。 第二に、量販店の競合が異業種(カテゴリーキラー等)も巻き込みながら激化し、趨勢として水産物商品の品揃え・価格・品質の優劣が顧客吸引を左右するという状況変化があり、量販店側の卸売市場・卸売会社に対する選別行動が鮮明化しているという変化が生じている。この点で、従前以上に卸売市場を利用する姿勢が量販店側に高まっているが、卸売市場はこの要望に対応できずに両者のミスマッチが拡大している。結局、外部環境としては卸売市場の生鮮水産物取扱力への会社的要請が高まっているが、人材面・戦略面等で卸売会社はその要望に対応できずに「じり貧状況」となっている。従って、卸売市場の発展方向は生鮮水産物の仕入システム、加工、配送機能をいかに高度化することにあるかが1年目調査過程で究明されたといえる。ただし、卸売市場・卸売会社の発展条件は地域的差異(西日本と東日本、首都圏とその周辺等)で微妙に異なることが考えられ、1年目の研究成果(仮説)の妥当性をさらに次年度に検証する必要がある。
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