平成8年度から3ケ年にわたり、水産物中央卸売市場の発展方向に関する調査研究を実施した。この期間に訪問した市場は札幌、盛岡、北上、花巻、仙台、福島、郡山、名古屋、岐阜、金沢、奈良、福岡、佐賀、鹿児島など10数余にのぼる。調査機会を与えてくれた文部省科学研究費に感謝申し上げたい。研究成果は以下のとおりである。 1、 東北ブロックでの市場間競争が激化しているのに対して、西日本とりわけ九州ブロックではそれほど競合が激しくないといった地域格差が大きい。 2、 卸売会社の活動が活発(市場が活性化)な市場ほど、環境変化への対応が迅速でかつ組織再編がすでに完了している。 3、 経営状況が必ずしも市場活性化と連動していない。つまり、無借金の卸売会社ほど経営姿勢が消極的で、将来に向けての投資行動をとっていないことが判明した。 4、 中央市場の発展方向が量販店対応にあることは否定できない。ただし、量販店対応には卸売会社としての情報力、組織力、金融力といった総合的マーケティングが必要であり、全ての中央市場が対応できるということでないことも判明した。 5、 結局、中央市場の発展戦略として、量販店対応が不可能な市場ではこれまで蓄積してきた「産地開発機能」を「商品開発機能」にシフトさせる方向で乗り切ることが唯一残された途であることも明らかとなった。
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