研究概要 |
海産ラフィド藻類には,養殖魚類の大量斃死を招く有害赤潮を引き起こす種類が多い。赤潮ラフィド藻においては,多くの種が越冬形態として生活史の中でシストの時期を持つことが知られるようになってきた。そしてシストは赤潮の発生源となり,分布域の拡大にも寄与していると考えられる。またシストの形成条件を明らかにすることにより,赤潮の発生〜消滅に至る固体群動態がより正確に把握できることが期待される。しかしながら,シストの形成条件が判明しているのは,Chattonella antiquaとC.marinaの2種だけであり,他の種類においては依然としてシストの形成条件は不明である。本研究においては,他のChattonella属のものをはじめとしてHeterosigma akashiwo等の有害種について,シストの形成過程と条件を明らかにすることを目的としている。本年度得られた成果は以下の通りである。 (1)ラフィド藻Heterosigma akashiwo,Chattonella ovata,Chattonella verruculoseの3種を用いて,培養条件下で栄養条件を変化させてシフト形成実験を行った。窒素源として硝酸塩ではなく,アンモニウム塩を用いた場合,C.antiquaとC.marinaでは良好にシストが形成されるのに対し,H.akashiwoとC.ovataではシスト形成小型細胞と判断される細胞が形成されたものの,建常なシストは形成されなかった。しかしながら,硝酸塩の実験の場合と同様に,暗黒下で細胞は長期生存できた。 (2)現場海域で発生したHeterosigma akashiwo赤潮の末期に,シストが相当大量に(>10^3/cm^2)実際に形成され,海底へと補給されることが判明した。形成直後のシフトは,現場の海底で発芽出来ず,2週間程度後より発芽が可能な状態になった。
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