研究概要 |
【目的】魚類の生活史初期における個体当たり代謝量Mと体重Wの関係M=aW^bを知る第一歩として、アユ仔稚魚の酸素消費量を測定した。 【方法】宮崎県栽培漁業センターで孵化・育成された、湿重量0.00043g(孵化直後)〜0.41g(83日齢)、全長6.6〜48mmのアユを用いた。体全体を細切した細切片の酸素消費量M_<in vitro>と生きた魚の酸素消費量M_<in vivo>をいずれも20℃で測定した。M_<in vitro>はVolumetric respirometer(タイテック(株)製生物呼吸測定装置)で測定した。細切片は魚体全体を冷却しながら眼科用鋏でペースト状になるまで細切して作製した。M_<in vivo>は50〜500mlのガラス瓶を呼吸室とし、密閉止水式で測定した。魚を呼吸室に導入後1時間から3時間までの酸素消費量をM_<in vivo>とした。 【結果】M(O_2 μl/min/fish)とW(g)の関係はM_<in vitro>とM_<in vivo>で異なっていた。調べた体重範囲内でM_<in vitro>は必ずM_<in vivo>より低かった。M_<in vitro>はM_<in vitro>=2.3W^<0.78>(n=32,r=0.998)で、単相のnegative allometry(b<1)であった。これに対しM_<in vivo>は体重0.04g(全長25mm)付近に変曲点が存在する2相性を示し、第一相はM_<in vivo>=18W^<1.01>(n=22,r=0.996)のisometry(b≒1)で仔魚前期から仔魚後期に、第二相はM_<in vivo>=2.7W^<0.42>(n=8,r=0.839)のnegative allometryでおおむねシラス型仔魚後期に相当していた。M_<in vitro>が低く単相なのは、細切した魚の活動度が遊泳運動などの活動の影響を受けない標準代謝量に近いためと考えられる。M_<in vivo>が2相性なのは、発育段階により呼吸室内におけるアユの活動度が異なるためと考えられる。
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