【目的】 個体当り代謝量Mと体重Wの間には一般にM=aW^bの関係があり、b値は普通1より小さく、したがって単位体重当り代謝量M/Wは体重の増加に伴って低下する。この現象は広い体重範囲で見られるが、仔稚魚期におけるMとWの関係については十分な知見が得られていない。本研究では、アユ、トラフグおよびオオニベについて、孵化直後の仔魚から、成長に伴う代謝速度の変化を調べた。 【方法】 アユ(体重0.00043〜0.41g)、トラフグ(0.00068〜2.7g)およびオオニベ(0.00025〜10g)について、生きた魚の酸素消費量M_<in vivo>と体全体を細切した組織片の酸素消費量M_<in vitro>をいずれも20℃で測定した。M_<in vivo>は魚の発育段階に応じて密閉止水式、半止水式、流水式のうち可能な方法で測定した。溶存酸素量の測定は電極法とWinkler法を併用した。M_<in vitro>は検量法で測定した。 【結果】 (1)アユの単位体重当り代謝量M_<in vivo>/Wは、孵化後30日齢(0.04g)までは体重が増加してもほぼ一定で、その後日齢とともに漸減した。一方、M_<in vitro>/Wは単相のnegative allometryで、孵化直後からの体重の増加に伴い減少した。(2)トラフグとオオニベでは、in vivoでもin vitroでも孵化直後から約1週間は体重がほとんど変化せずにM/Wが日齢とともに増大し、その後体重の増加に伴いM/Wが減少する相へ移行した。また、減少期には相の遷移がみられ、M=aW^bにおけるa値は成長に伴い増大した。トラフグとオオニベでM/Wが孵化直後に低く、その後成長に伴って増大したのは、トラフグとオオニベがアユと比べて未分化な状態で孵化するためと考えられる。トラフグとオオニベで認められた相の遷移は形態的な変化や遊泳方法の変化になどによって生じると考えられる。
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