ウナギ好中球のrespiratory burstにおいて、活性酸素スーパーオキシド産生量は酸素消費量とほぼ等しく、過酸化水素産生量はその約1/2であった。この量的関係は哺乳類貧食細胞のNADPH酸化酵素によって引き起こされる酸素代謝動態と化学量論的に一致し、魚類好中球でも哺乳類同様の酸素代謝機構の存在が証明され、魚類好中球においても酸素依存性殺菌が重要な働きをしているものと考えられた。異物で誘導されたウナギ好中球の活性酸素産生量は非誘導好中球より有意に高く、異物の侵入に対して、これを排除するために殺菌能の高い好中球が造血組織から放出されることが示された。 ヒト好中球で報告されているNADPH酸化酵素の構成因子であるシトクロム-ムb558の大サブユニットを認識する抗体(抗原としてシトクロームb558アミノ酸残基550-569に相当する合成ペプチドを使用)を作成しドットプロット法により調べたところ、魚類好中球におけるNADPH酸化酵素の存在が証明された。さらに、ウエスタンプロット法を行ったところ、ヒト好中球と同様に分子量80-110kDaに特異的なバンドが検出された。さらに蛍光抗体法により、この抗体は界面活性剤で細胞膜の透過性を上げた後にのみウナギ好中球のエピトープを認識することが示された。これらの結果から、魚類好中球のシトクロームb558はヒト好中球と同様な分子量および存在形態をしているものと考えられ、NADPH酸化酵素が種を越えて保存されていることが示唆された。
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