研究概要 |
駿河湾の底刺し網、底引き網、底延縄で採集したサガミザメ159個体、ヘラツノザメ157個体を材料として、それらの生殖腺、生殖器管を観察・測定し、両背鰭前縁にある棘を採取した。本年度は採取した棘の年齢形質としての有効性について主に検討した。第1、第2背鰭の棘とともにサメの成長に伴い伸長し、大きくなることが確認された。第1背鰭棘より第2背鰭棘の方が先端の磨耗が少なかったため、第2背鰭棘の露出基底部、露出先端部、露出中央部の3カ所の横断研摩標本を作製した。研摩標本は5%蟻酸で脱灰後、ヘマトキシリン染色を行い、カナダバルサムで封入し永久標本とした。棘の露出部は薄い外套膜で覆われ、前縁には象牙質で形成された突起部を持ち、本体部は内象牙真層と外象牙真層とから形成され、内腔は軟骨によって占められていた。内象牙真層と外象牙真層には輪紋が観察され、それらの輪紋数は先端部で最も大きかった。輪続率は先端部が最も高く、サガミザメで85.3%、ヘラツノザメで83.8%であった。全長700-1226mmのサガミザメの輪紋数は5-24で、全長522-1280mmのヘラツノザメの輪紋数は6-15であった。輪紋数もまた全長が大きくなるにつれて増加した。生殖腺の状態から推定した両種の成熟した最小個体の全長はサガミザメ雄778mm、雌1030mm、ヘラツノザメ雄640mm、雌852mmで、それらの輪紋数はそれぞれ7,13,7,12輪であった。輪紋の形成周期は不明であるが、年1輪形成され、出生時には1輪形成されているとすると両種の雄は約6歳で、雌は11-12歳で成熟すると考えられる。両種とも非胎盤型の卵黄に依存した胎性であり、全長250-350mmで生まれる。そのため、出生時には1輪輪紋が形成されていると考えられる。
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