HPLC分析を主体とした麻痺性貝毒の系統的な検査法を確立し、国内外から集めたラン藻試料についてスクリーニングを行った。その結果、オーストラリア南部の河川で家畜を大量に斃死させたAnabaena circinalisとアメリカ南東部で大量に繁茂しているLyngbya wolleiに本毒を検出し、麻痺性貝毒が渦鞭毛藻のみならずラン藻類にも広く分布していることを示した。A. circinalisはC1、C2など7成分を、L. wolleiはdcSTX、dcGTX2、dcGTX3、のみを生産していた。また、L. wolleiからは6本の同定不能なピークが検出されたので、各種クロマトグラフィーを使って単離し、構造決定した結果、新規saxitoxin同族体であることを明らかにした。このうち5成分は側鎖にアセチル基を有し、3成分は12β位の水酸基が還元された構造を有していた。アセチル同族体のマウス毒性はカルバモイル同族体の約1/10であったが、12位が還元されると毒性は消失することを明らかにした。 オーストラリア産A. circinalisを大量培養してグアニジウム基をもつ化合物を指標に麻痺性貝毒の前駆体の検索を行った結果、著量のアグマチンが含まれることを明らかにした。また、麻痺性貝毒の変換に係わる酵素を検索した結果、有毒渦鞭毛藻と同様に側鎖にN-sulfone基と11位に硫酸エステルを導入するN-sulfotransferaseとO-sulfotransferaseを検出した。
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