日本では古くから海藻を食用としているが、海藻は陸上植物と違う環境に生息するため、その構成成分は特有な栄養・生理機能を持つことが期待されるが、海藻食物繊維に関する研究はこれまでにあまり行われてこなかった。そこで本研究では海藻に含まれる食物繊維の栄養機能を明らかにすることを目的とし、脂質の消化吸収やコレステロールの代謝に深く関わっている胆汁酸に注目することとした。一方では、食物繊維の負の効果といわれている栄養成分の吸収阻害と関連する、ビタミンなどとの結合の研究課題に加えた。 ワカメ、コンブ、ヒジキ、スサビノリ、アオノリなどわが国で食用とされている主要な緑藻、褐藻、および紅藻を試料とし、これらを粉砕した後に水で膨潤させた。脂質の消化吸収やコレステロール代謝に関係が深いコール酸ナトリウムをこれに添加し、37℃で2時間振とう培養した後、遠心分離を行い酵素比色法で胆汁酸を測定し、結合の割合を調べた。海藻とコール酸ナトリウムの結合は、スサビノリで最も高く、アオノリがこれに続いたのに対し、ヒジキやコンブでの結合量は少なかった。一方、食物繊維の負の効果と考えられている栄養成分については、ビタミンB_1(チアミン)を対象をし、同様の実験を行ったところ、ワカメの芽株やヒジキとの結合が高く、コンブやスサビノリで低いことが分かった。上記の胆汁酸、ビタミンのいずれにおいても、海藻の保水性と吸着量との明確な相関関係は見いだされなかった。
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