肝臓では一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)が合成されるが、腸内細菌により変化を受け二次胆汁酸(デオキシコール酸など)となり、小腸から吸収されて肝臓に戻り、腸肝循環と呼ばれている。脂質の消化吸収には水不溶性の脂質を乳化する胆汁酸が必要で、腸肝循環による吸収を食物繊維が阻害することによりコレステロール代謝が改良されると考えられている。一方、食物繊維の摂取過剰による問題点も指摘され、ビタミンや無機質の利用率の低下も注目されるようになってきた。本研究では海藻に含まれる食物繊維の栄養機能を明らかにしようと考えた。 わが国で食用とされているスサビノリ、コンブ、ワカメ、ヒジキを試料とし、これらに含まれる水溶性および不溶性の食物繊維に対する、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸の吸着を調べた。水溶性食物繊維は不溶性食物繊維に比べると、いずれの胆汁酸の吸着も全般的に大きかった。不溶性食物繊維においてはいずれの海藻についても、コール酸に比べると他の胆汁酸の吸着量が多くみられたのに対し、水溶性食物繊維においては、スサビノリとワカメでケノデオキシコールサンの吸着が多い以外に、著しい相違はみられなかった。 無機質の吸着として亜鉛を用いたが、不溶性食物繊維についてはワカメで多く、スサビノリで低く、一方、水溶性食物繊維についてはコンブで高かった。 以上、海藻食物繊維と胆汁酸ならびに無機質との結合について研究を行ったが、食物繊維の主要な生理的役割である吸着に関しては、その機構が明らかにされていない。水の挙動については、核磁気共鳴などの手法を使用することでゲル化の状態が調べられるようになってきており、今後の研究において食物繊維の物理化学的な役割を明かにしたいと考えている。
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