研究概要 |
海産無脊椎動物にβ-alanineを特異的に利用するopine dehydrogenase(OpDH)が存在するか否かを確認するために,等電点電気泳動による検索を進めた(現在も進行中)。その検索結果を基に,ベッコウカサガイCellana grataおよびアヤボラFusitriton oregonensisを実験対象として,両種に検出されたβ-alanopine dehydrogenase(β-AIDH)に関して比較生化学的検討を加えた。 ベッコウカサガイにはβ-AIDHとtauropine dehydrogenase(TaDH)活性が検出された。筋肉部よりOpDHを精製したところ,両酵素は完全に分離されたことから,本種にはβ-alanineに特異性を示すβ-AIDHが存在すると結論された。現在,さらに,β-AIDHおよびTaDHについて酵素化学的性状の比較・解析を進めている。これまでに得られた結果については平成8年度日本水産学会春季大会(講演番号832)および秋季大会(講演番号937)において口頭発表した。ベッコウカサガイで得られたβ-AIDHに関する知見は,これまでに報告例のない新たな知見であるため,早急にレポートする予定である。 一方,アヤボラ筋肉にはβ-AIDH活性に加えてalanopine-DH,strombine-DHおよびTaDH活性が検出された。アヤボラOpDHの精製を試みたところ,低回収率ながら数成分のOpDHの精製に成功した。現在,回収率の改善および精製期間の短縮を目的として精製方法のチューニングを行っている。アヤボラに検出されたβ-AIDH活性は,広いアミノ酸(オピン)基質特異性を示す,ベッコウカサガイのOpDHとは異なるタイプの酵素によるものである可能性を示唆する予備的知見を得ている。なお,これらの結果の一部は平成9年度日本水産学会春季大会において口頭発表の予定である(講演番号938)。
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