この研究では、食糧法の施行に伴う稲作経営農家の戦略的対応と、その規定要因を経営学的に解明することを目的として研究を行った。本年度においては、当初の研究対象地域のうち、宮城県が受け入れ先の農業団体より協力が得られず、これを除外して新たに山形県を加え、予定通り北海道、秋田、山形、新潟の4道県について調査を行った。研究計画では、本年度、意向調査と経営体の2つの調査を予定したが、調査期間の関係から経営体調査については実施できなかった。しかしながら、意向調査については計画した420戸を上回る442戸からの回収を行うことができた。 この結果は、目下解析中であるが、概要として以下のような点を明らかにすることができた。第1に、食糧法の受け止め方に対する地域的な差が大きく現れたことで、これを「評価する」意見は、北海道、秋田、山形が10%程度であったのに対して、新潟県は32%であった。このことは、経営に対する影響予測でもみられ、「プラス」判断は新潟を除く地域では6%前後であったのに対して、新潟県では40%にも達した。第2に、米の販売対応に関しても、新潟県を除くとJA以外への販売を行った農家は20%前後であったのに対して、新潟は実に58%にも達するなど、販売対応が大きく異なっていた。第3に、食糧法への経営対応に関しては、ほぼ全地域とも25から30%の農家が転換を図りつつあることが判明し、全体的に混迷が深まっていることを示唆した。また、採算のとれる米価水準に関しても、新潟県とその他の3地域間で大きな格差がみられ、今後の経営戦略が非常に重要になってきたことが明らかになった。
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