わが国農業の基幹作目である米は、ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意による国際化や、食糧法の施行などの環境変化によって、激動した時代を迎えている.この研究は、こうした大きな経営環境の変化に稲作農家が如何に対応しつつあるか、そしてその経営戦路を規定する要因は何かを解明する目的で行った. このため、これまで北海道、秋田県、山形県、新潟県を事例にして、農家意向調査の実施、米産地の市場対応、農家の面接調査、3カ年にわたる農家の追跡調査等を実施し、以下のような知見を得た. 第1に、自主流通米市場の価格変動に対応した稲作農家の戦略的な動きは、産地戦略に規定される面がかなり強く見られたということである.これらの産地戦略は、品種毎に品質向上を目指す指導や、流通対応面で明確に見られ、とりわけ北海道、秋田県などでは農協系統を通じた販売戦略が展開されていた.これに対して、新潟県では農協系統の他に、農家の直売傾向がかなり見られた. 第2に、経営環境の変化に対応した稲作農家の対応は、全体的には遅れており、その内容も販売先の開拓や有機栽培への転換などにとどまっていた.経営戦略の手法に関しては、コスト戦略や販路の開拓、差別化等に関心がみられた. 第3に、新潟県内の農家を対象に行った3カ年の追跡調査では、年毎に経営対応の意向が変化しており、また同一産地でも農家間の経営対応は異なっていた.このため、そうした経営戦路の規定条件の明確を経営規模、経営主の年齢、販路の有無等から考察したが、明確な傾向を掴むことは出来なかった.従って、現段階で見た稲作農家の経営対応は産地戦略にかなり強く規定された条件の中で展開されていることが明らかにされた.
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