初年度の成果をふまえ、次年度はとくに以下の4点をおこなった。当年は主に資料調査に力点をおいたので、具体的分析の過半は98年度の課題である。 (1)初年度におこなった戦前期の土地管理組合および土地管理主体に関する政策構想の整理をふまえ、戦後農地改革=農地法における土地管理システムとの違いという点からそれを位置づけ、1997年度農業法学会において「農地改革・農地法の現代的意義-歴史研究の視点から-」と題する報告をおこなった。土地管理(土地政策)に限らず、戦後改革とその前史との農政思想の大きな違いは「集団」に対する政策的位置づけであると考えるに至った。(2)引き続き、島根県穴道湖周辺農家および宮城県柴田郡にける資料調査をおこない、主に技術関係資料の収集・整理をおこなった。また、滋賀県農会の機関誌『滋賀県農会報』『滋賀農報』の分析を通じ、滋賀県における農家小組合の推移・規模と共同作業の性格等についてとりまとめをおこなった。(3)『帝国農会報』全巻の掲載記事について、農業生産手段(品種・肥料・農機具)・稲作技術・労働力・共同作業・むら機能・農家小組合等の諸指標と北海道・東北・関東・北陸・中部・近畿・中国四国・九州および満州・朝鮮という地域にもとづいて分類をおこない、全国的動向を整理しつつある。(2)の事例調査もこの全国的分析のなかに位置づけておこなう予定である。
|