1) 農家小組合は、これまでその「古さ」が強調されがちであったが、それは都市の形成に伴って発生した農業労働力不足や農産物需要に対する集団的・自生的対応策として成立したものであり、近代以前の集落組織とは異なる新しい機能集団であった。本研究では、近代日本が直面した新しい経済・社会状況に対して、農業と農村が「個と集団」関係の再編(具体的には農家小組合の形成)を通じて対処したことに着目し、その機能を具体的に明らかにしようとした。 2) 注目すべきは以下の諸点である。(1)府県レベルの多くの指導者は「生産と経済」を接合させるキーを「労働能率の向上」だと認識しており、端緒的ではあれ自家労働評価(個の自立)意識の前進をある程度反映した新しい地縁集団の形成という意味を帯びていた。その影響を受けて、(2)「共同作業」の存立条件は「農業環境のよさ」だとする見解が多く出されている。事実、近代日本における集落営農(農家小組合)は、2度にわたりこの波を経験したのであるが、それは、不況下にあっては、経済困窮に耐えるという論理と農業経営を改善するという論理は、整合する必然性と余裕を喪失するからである。(3)またその技術的諸条件についても一定の整理がなされている。面的強制力をもつ作業=第1類、施設を伴う作業=第3類、それ以外の作業=第2類、に農作業を分類すると、第2類こそがネックであり、しかもかかる作業が現実の農作業の中枢部分を占めているところに、この時代特有の困難があった。(4)しかしそれとても、作業ユニットとしての合理性を確実に追求するならば、ある程度の安定効果を生み出しえたのであり、「技術段階」という外在的条件(=与件)のみならず、「具体的・科学的な問題処理能力」という主体的力量の関数でもあったのである。
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