研究概要 |
従来,系統農協の農産物販売事業は,系統3段階を基本にして行われてきた.しかし,農産物流通構造が変動する中で,系統三段階による事業方式も見直しを余儀なくされている.本研究は,農産物流通構造変動下での系統事業方式の再編方向を実証的に検討し,あわせて組織再編のあり方に考察を加えるものである.以下,研究結果の概要を述べる. 1.青果物流通においては,依然として卸売市場流通が重要な位置を占めているが,チェーン量販店のシェア拡大によって,従来のセリ取引を基本とする卸売市場流通の変質がすすんでいる. 2.とくに「定時・定質・定量・定価」など,量販店のニーズに的確に対応するために,産地段階では,商品とその供給情報が販売力の基本となりつつある.従来市場出荷の主たる担い手であった県レベルの経済連は,商品供給において十分に機動的で確実な出荷主体たりえず,単協が実質的な出荷主体になる傾向がすすんでいる.その意味では実質的な流通段階の短縮が生じている. 3.全農は,青果物における全国連機能を見直し,大消費地における卸売機能と情報及び決済機能に重点を移している.とりわけ大消費地における中小スーパーチェーン等を対象にしたパッキング,定時配送は,新たな流通構造に対応した全国連の重要な課題である. 4.流通構造の再編にともなって,多様な販売チャネルが生じている.消費地単協における消費者向け直売や,観光と結びついた直売,そして県連による県産品の直売など,多様な直売の可能性がある.従来の委託関係を基本にした系統段階性にもとづく事業方式だけでなく,多様な販売形態が生じている.
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