アジア農業の特徴は小規模家族経営であり、その持続的発展には生態系(エコ)との調和のみならず経済性(エコ)推進が必要不可欠である。本研究は国内外においてエコエコ農業経営の確立を図るため、ファーミングシステムの現状と改善方向を検討することを目的としている。水田農業のみならず野菜を中心とする畑作農業経営を対象として、「低投入高産出」型ファーミングシステムの構築へ向けて、主要な農業地帯で栽培方式の実態と問題点の解明を進めている。 本年度は、新潟県上越市、兵庫県神戸市、茨城県笠間市、また国外ではタイの東部・中部およびインドネシアの西部ジャワ・バリにおいて実態調査を実施し、「低投入高産出」型ファーミングシステム確立の課題と可能性について探究した。わが国の稲作に関しては、低農薬・少化学肥料による栽培体系が環境保全型農業の方向として推進されているが、防除技術と土づくりに問題が多い。水田面積の20〜30%も減反しているので、緑肥による地力向上を目指した輪作体系の確立を進めるべきと考えられた。また、空散を止めた場合の病虫害防除体制が未確立で、予察システムの推進と耐病性品種の導入が望まれる。 野菜栽培においても低農薬・少化学肥料化が進められており、その究極は完全無農薬無化学肥料栽培である。各地にそのような事例が存在するが、いずれも消費者個人や団体との提携の上に成立している。栽培方式に関しては、生物間相互関係を積極的に取り入れた間作・混作方式はほとんど見られない。しかし、インドネシア西部ジャワ・ではトゥンパンサリと呼ばれる間作・混作が支配的で、キャッシュフローの改善、リスクの分散あるいは土壌流出防止など経済的生態的意義が認められている。 今後は、特定な作物間に認められている助長効果などを取り入れたファーミングシステムの構築に向けて生物間相互関係の同定が必要である。
|