アジア農業の特徴は小規模家族経営であり、その持続的発展には生態系(エコシステム)との調和のみならず経済性(エコノミー)の推進が必要不可欠である。そのような生態系保全と経済効率の両立を可能とする農業をエコエコ農業と呼び、必ずしも化学的投入財の全面的不使用を意味するものではないが、「低投入高産出」型農業発展を志向している。とくに作物選択、栽培方式および生産物販売方法などの改善によって実現できる新たな農業生産・経営システムを指している。 本研究は、国内外において小規模家族経営の持続的発展方向をエコエコ農業経営の確立にあると認識し、とくにファーミングシステムの現状と改善方向を検討することを目的とした。すなわち、水田農業のみならず畑作農業経営を対象として、一般的な栽培方式といわゆる代替農業的栽培方式との比較検討によって、生態的・経済的視点からバランスのとれた新しいファーミングシステム確立への示唆を得ることを狙いとした。そのため、日本国内では茨城県笠間市と新潟県上越市において、また国外ではインドネシア高地野菜地帯で栽培・経営調査を実施し、エコエコ農業展開への課題と可能性を検討した。その結果、環境保全型稲作の確立には、農薬の節減、生物的防除の確立、化学肥料の節減、乾燥調製施設の差別化、および事務量増大への対応などが重要な課題と考えられた。新たな技術体系と地域農業支援システムの具体的検討が必要である。 一方、熱帯高地の野菜栽培には多くの生態的経済的問題が存在する。技術的には、間作・混作システムが作物固有の生物機能を活用して経営的に補完・補合関係を樹立する可能性を秘めた農法であるが分かった。したがって、作物間の助長効果を踏まえたファーミングシステムの具体的検討が必要である。
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