一般に途上国において農村開発の担い手が行政機関ではなくて協同組合となることが多い。しかしどの協同組合でもよいというわけではなく酪農協同組合が相応しいと考えられる。それは酪農協が牛乳を集荷し、飲用処理し、加工することによって付加価値を高め、組織された都市の消費者に販売するという他の組合には見られない多面的な活動を行うことができるからである。つまり酪農協は年間を通じて休むことなく活動しており、生産から消費までの農畜産物の流れを統一的に把握し、農業生産の置かれている問題点を客観的に捉えられる立場にある。こうしたことから、村の農業を発展させ、地域を活性化させていくうえでもっとも重要な組織といってよいだろう。 がだ、実際にこうした生産販売活動を一つの事業として経営していくには資金の調達や人材の確保などに多くの問題を抱えている。そうした課題に対して村レベルの小規模組合の場合は対応が難しい。そこで、連合会を組織し系統組織の力によって問題を解決していこうということになる。インド政府が進めている政策は県レベルの連合会を活動の拠点にすることである。ところが、実際にはまだ郡レベルの連合会も多数活動しており、連合会間の調整が十分なされているとはいえない。こうした状況は個別農民の経営を強化し、広大な農村部に雇用の場を提供して行こうとする包括的な農村開発にとって障碍となっており、解決が求められている。研究事例として取りあげているマハラシュトラ州ソラプール県の郡レベル連合会の活動も個別的に見れば優れたものであるが、酪農を通じて地域全体の発展を図ろうとする観点からは解決されなければならない多くの課題を残している。
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