近年、農村地帯は社会的動向を背景として、混住化や土地利用状況の変化が進行している。また、水田地帯がもつ多機能の評価や自然環境保全機能等への期待も高い。これらに対応するため、農業水利施設の役割や用・排水の水質、農村地帯が周辺水環境に与える影響等、水に関する総合的な研究が要望されている。従って、従来用水管理が主体であった水管理も、これからは用水、排水、水質を包括したものでなければならない。 調査地区である青森県津軽地域の水田地帯は、その歴史的な経緯からそれぞれの地域的特徴を生かした用水管理を行っている。本研究によって以下のことが明らかになった。 1、 用水管理と排水管理の実態を調査し、用水の地区内依存率や反復利用率等を基にして利水形態の異なる3地区について閉鎖型循環灌漑地区、半開放地区、開放地区と分類した。閉鎖型循環灌漑地区では地区内反復利用率が極めて高く73〜78%も還元水の再利用を行っている。 2、 地区内末端の排水路では代かき・田植期に水質濃度が通常の2〜3倍になる。さらに、中干し期や落水期にもやや高くなる傾向を示した。 3、 流入負荷量と流出負荷量は閉鎖型循環灌漑地区、半開放地区、開放地区の順に大きくなる傾向を示した。水質収支は降雨量によって影響を受けるが、閉鎖型循環灌漑地区は±0の均衡型、掛流しの傾向が強い開放地区は流出負荷量の多い汚濁型に分類される。 4、 反復利用による水田への肥料成分還元量は用水管理と密接な関係にあり、閉鎖型循環灌概地区では窒素が5〜10kg/10a、リンは0.7〜1.0kg、有機質は27〜37kg程度還元されている。 5、 慣行田では代かき・田植期に用水量が最大となるが、不耕起栽培田では移植を容易にするための初期灌水程度(30mm)あれば十分であるため、設計用水量は小さくなる可能性が高い。
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