1.酸性溶液が添加された場合のイオン濃度計算に用いた化学平衡式と計算結果 土壌溶液濃度測定値にはイオンペア濃度も含まれるため、硫酸・アルミニウム・カルシウムが関連する15種のイオンペア生成を考慮し、イオンの活動度を求めた。その結果、アルミニウム溶解定数は硝酸の方が硫酸より大きいことが判明した。また、硫酸の吸着曲線はLangmuir型によく適合した。イオン濃度計算にはアルミニウムの溶解と加水分解、アルミニウムイオンとカルシウムイオンとの陽イオン交換、硫酸イオン吸着、硫酸アルミニウム生成、炭酸塩平衡の9種の化学平衡式、および、電気的中性条件、硫酸とカルシウムの質量保存則を用いた。 計算は陽イオン交換の平衡定数のみ未知数とし、pHの測定値との適合が良い値を試算的に与えた。その結果、pHで±0.2の誤差で計算可能であった。また、硫酸は硝酸に比較しpHの低下が少なく、硫酸イオンの吸着による中和機能と硫酸アルミニウム生成がアルミニウムイオン濃度を低下させることを計算より明らかにした。しかし、添加回数が増加すると計算値のpHが下回り、粘土鉱物の風化過程を化学平衡式に組み込む必要性が確認された。 2.酸性溶液浸透による透水係数と浸透溶液pHの経時変化 土壌団粒の崩落率は硫酸の場合pHに依存せず微少であったが、硝酸の場合pH3.5以下で急増した。そして、土壌カラムと硝酸溶液を平衡させた後の透水係数は、pHと団粒崩落率の関係と良く一致した。団粒の崩落率が少ない硫酸溶液では透水係数の低下は認められず、浸透溶液のpHは低下した。しかし、硝酸の場合は透水係数が低下し、pHが上昇した。団粒が崩壊する場合、溶液と土粒子の接触表面積が増加し、陽イオン交換の増加がpHを上昇させることが判明した。団粒の崩壊とそれにともなうpH上昇の時間的遅れの解明は、今後の課題である。
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