硫酸溶液の水平拡散に伴う火山灰土壌中のpH分布とイオン濃度分布予測手法の検討を行った。従来、土壌中の溶質移動解析には分散移流式を用いている。しかし、イオン種の数だけ微分方程式が必要となり大変煩雑となる。また、微分方程式中にイオンの吸着離脱項を各イオン種ごとに導入するのも困難となる。そこで、土壌と酸性溶液の反応を人為的に促進した場合(バッチ法)に適合する化学平衡式とMixing Cell Modelを適用して、硫酸溶液の拡散に伴うpH分布予測を行った。 硫酸溶液の水平拡散によるpH分布は、等質物質中の一般的な拡散現象と異なり、滑らかなpH分布を呈さなかった。pH分布より火山灰土壌中のpHの拡散係数を求めると、平均値が7×10^<-8>cm^2/sで、自由水溶液中の水素イオンの拡散係数より3〜4オーダ小さな値であった。溶液と土壌の反応を人為的に促進させたバッチ法と拡散の場合を比較すると、土壌と溶液間の反応速度や反応に関与する土壌割合が異なると考えられる。そこで、硫酸イオン吸着量と陽イオン交換に関与する土壌粒子割合がpH分布に与える影響を比較した。その結果、硫酸吸着量、反応に関与する土壌粒子割合を低下させると、滑らかなpH分布から変位することが明らかとなった。バッチ法に適用した化学平衡式中で、硫酸イオン吸着を1/50、溶液との反応に関与する土壌を15%とした場合、測定値と±pH0.1程度の誤差で計算可能であった。 本研究により、pHの分布が必ずしも滑らかな曲線分布とならないことを測定値と予測値により示すことができた。また、酸性雨が火山灰土壌の塩基性陽イオンやアルミニウムイオンの溶脱を予測する場合、バッチ法で適用される化学平衡式とMixing Cell Modelの利用が有効であることを立証した。
|