本研究では、都市と農村の融合を提案した田園都市論がイギリスと日本においていかにして郊外型住宅地開発へと変容していったかということを主軸に、ヨーロッパと日本という地域的比較、19世紀後半と20世紀後半という時間的比較の2通りの比較都市計画的研究により、日本的都市農村計画の特質を明らかにした、日本における望ましい都市と農村の計画的整備手法を論じることを最終的に目的としている。 そのために、平成8年度は主にハワード「田園都市論」について研究を進めた。 その際には、イギリスハートフォードシャーカウンティ地域資料館の協力を得て、ハワードが田園都市論を形成する際のメモなどの一次資料を詳細に調査して進めた。その結果、ハワード「田園都市論」は計画思想としては、循環型社会として都市と農村の融合を目指していたこと、そしてこのような考え方は、近年盛んに提案されている、環境と共生する形で都市と農村を広域的に整備していくという考え方と同質のものであり、その先駆性を持つものとして評価することができること、しかしその計画思想に見合った総合的な空間計画技法を見いだせなかったところができること、しかしその計画思想に見合った総合的な空間計画技法を見いだせなかったところにハワード「田園都市論」の限界があったことを考察した。
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