簡便な水の量と質との同時測定法に関する基本データを確定し、その測定法の能力を検証することを主要な目的としている。まず、試作テンシオメータと電子天秤とで構成される、土壌の保水性と透水性の簡易同時測定法を開発するため、各種土壌に対して微小なデジタル測定値をビデオ記録し解析する手法の適用性のさらなる向上を図る。土壌の保水性と透水性の測定原理は、土壌水分ポテンシャルと土壌内全水分量とを自記計測するものであり、これまでの改良結果を踏まえ本年度は、直径5cm、厚さ1cmの土壌スラブ上下の圧力センサ及び天秤の各指示値をデジタル出力し、タイムラプスビデオレコーダー他の設備備品により、計測値を直接撮影し取り込み解析する方法を確立し、データの集積をはかっている。 次に、水の質を色により表現する手法の開発に関しては、同じビデオ記録法を活用し、精密な水質の化学分析結果との関連を解明すると共に、人間の視覚との重要な関連性をも合わせ追求し、実用性の向上を目指した。水の色の測定には同じビデオ装置を用い、これまでに改良を重ねた手法を応用して、現場あるいは実験室で試料水の散乱光を撮影し、赤・青・緑の三原色分解値について検討すると共に、化学的な水質項目の分析並びに水の色に関連する実験項目の測定を重ねた。これより、化学的な意味での水質のみならず、人が直接的に見る水の色が農地環境とどのような関連を有して行くかについての方向性を見出す端緒が得られた。 さらに、土壌水中のイオンの量と質が水の存在状況に与える影響を、特に土の分散凝集現象面から解析し、農地環境条件の安定化の方向性を検討した。灌漑水の水質汚濁に伴う土壌の物理・化学性の悪化の状況は、極めて複雑な様相を呈することが確認され、続いて土壌の団粒構造と分散凝集反応との関連に焦点を絞り、塩類障害及び土壌侵食現象の指標となり得る測定項目について検討を継続している。
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